突然の失業は誰にとっても望ましくない出来事です。生活費の確保や次の仕事を見つけるまでの期間に不安を感じる方も多くいます。この記事では、失業保険の基礎知識から受給期間、手続き方法、受給期間終了後のサポートなどを解説します。記事を読めば、失業保険制度を正しく理解でき、効果的に活用する方法がわかります。
失業保険は、一定の条件を満たせば受給できる公的保険制度です。受給期間は、離職理由や被保険者としての在籍期間によって決定されます。状況により延長できる場合もあるので、早めに手続きをしましょう。
失業保険の基礎知識
失業保険の基礎知識として、以下の項目を解説します。
- 失業保険とは公的保険制度の一つ
- 失業保険の目的
- 失業保険の受給資格
失業保険とは公的保険制度の一つ
失業保険は労働者の生活を守るため、雇用保険法にもとづいて運営されています。失業した人の生活を支え、職業訓練や職業紹介などのサービスを提供し、新たな雇用への移行を支援する制度です。国や会社、労働者が資金を出し合い成り立っています。
失業保険を利用するには、いくつかの条件があります。一定期間働いていることや、自分の意思で仕事を辞めていないことなどです。条件を満たしていれば、失業したときに基本手当という形で一定額が支給されます。失業保険の手続きや管理は、ハローワークで行われています。
正社員だけでなく、パートやアルバイトも条件を満たせば加入できるのが特徴です。自分で商売をしている人は、原則として加入できません。
失業保険の目的
失業保険は失業者の生活を支え、再就職を後押しします。失業保険の目的は以下のとおりです。
- 生活の安定
- 求職活動支援
- 再就職促進
- 雇用の安定
失業保険は失業者が安心して求職活動に専念できるように、一定期間の生活費を保障する制度です。失業者の生活を支え、労働市場全体の健全性を保つ効果や社会の安定にも貢献しています。
失業保険の受給資格
失業保険の受給資格を得る条件は、以下のとおりです。
- 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上ある
- 労働の意思と能力がある
- 積極的に求職活動を行っている
- 倒産・解雇等による離職、または正当な理由のある自己都合退職である
- 65歳未満である
- 就労が困難な状態でない
- 雇用保険の被保険者でない
- 週20時間以上の就労をしていない
- 学校などの教育施設に在学中でない(夜間・通信制を除く)
すべての条件を満たし、ハローワークでの求職申込みと失業認定を受けると、失業保険の受給資格を得られます。
» 失業保険の受給条件や金額、手続きを徹底解説
失業保険の受給期間
失業保険の受給期間は、原則として1年間です。年齢や被保険者期間によって変わるため、自分の状況に合わせて確認しましょう。失業保険の受給期間について以下の2つを解説します。
- 受給期間を決める要素
- 受給期間の計算方法
特定の条件下では受給期間が延長される場合があります。
受給期間を決める要素
失業保険の受給期間を決める要素は、年齢や被保険者であった期間、離職理由、雇用形態です。年齢が高い場合や被保険者であった期間が長い場合は、受給期間が長くなります。離職理由によっては受給期間が短くなります。自己都合退職の場合は、会社都合の退職に比べて受給期間が短くなるのが一般的です。
雇用形態も受給期間を決める重要な要素です。一般の雇用保険被保険者と高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者では、受給期間の計算方法が異なります。障害者等の就職困難者であるかどうかや、地域の雇用情勢なども考慮されます。
季節的変動による離職か訓練延長給付の対象か、育児休業給付の受給歴に該当するかどうかも受給期間に影響する要素です。倒産・解雇等による離職者か特定理由離職者かどうかも考慮されます。
» 会社都合の退職による失業保険|受給条件や手続き方法を解説!
» 【失業保険】自己都合退職時の手続きや給付額を解説!
受給期間の計算方法
失業保険の受給期間は、年齢と被保険者期間にもとづいて計算されます。原則として90~360日の範囲で設定されるのが一般的です。失業保険の受給期間は、以下のとおりです。
- 45歳未満の場合
- 被保険者期間が1年未満なら90日、被保険者期間が10年以上なら90~240日が受給期間です。
- 45歳以上65歳未満の場合
- 被保険者期間が1年未満なら90~150日、被保険者期間が1年以上なら180~330日が受給期間となります。
- 65歳以上の場合
- 被保険者期間が1年未満なら90~150日、1年以上なら150~360日が受給期間です。
特定の理由で離職した人や障害者などの就職が難しい人は、最大で330~360日の受給期間が設定されます。受給期間は年齢や被保険者期間によって変わるため、自分の状況に合わせて確認しましょう。
» 失業保険はいつからもらえるのか、手続きや金額を解説!
失業保険の受給期間中に知っておくこと
失業保険の受給期間中に知っておくことは、以下のとおりです。
- 受給期間の延長条件
- アルバイトをする場合の規定
- 再就職時の給付金
受給期間の延長条件
失業保険の延長が認められる主な条件は以下のとおりです。
- 病気やけが
- 妊娠や出産、育児
- 親族の介護
- 災害
- 60歳以上の求職者
- 職業訓練受講
条件に当てはまる場合、ハローワークに申請すれば受給期間を延長できます。延長には上限があるので注意しましょう。延長の手続きには証明書類の提出が求められる場合もあるため、事前に必要な書類を準備しておきます。
受給期間の延長は、再就職への準備時間を確保できるメリットがあります。状況に応じて適切に活用しましょう。
アルバイトをする場合の規定
収入が一定額以下であれば、アルバイトをしながら失業保険を受給できます。アルバイト収入が基本手当日額の3倍以下なら全額支給されますが、3倍を超える場合は超過分が基本手当から控除されます。収入が基本手当日額の13倍を超えると、失業認定日に申告が必要です。アルバイトの期間にも気をつけましょう。
アルバイトをする場合、28日を超えると失業認定日の変更が必要です。アルバイト期間中も求職活動は継続する必要があります。複数のアルバイトをする場合は、合算した収入で判断されます。アルバイト先で正社員になった場合、失業保険の受給は終了するので注意が必要です。
規定を守れば、アルバイトをしながら失業保険を受給できます。状況によって異なる場合もあるので、詳しくはハローワークに確認しましょう。
再就職時の給付金
再就職時には、さまざまな給付金を受け取れる可能性があります。主な給付金は以下のとおりです。
- 再就職手当
- 再就職手当は、失業給付を受けている間に早期に再就職が決まった場合に支給される手当です。残りの給付日数の50〜60%が一括で支給されます。
- 就業促進定着手当
- 就業促進定着手当は、再就職した職場に一定期間継続して勤務した場合に支給される手当です。就業開始から6か月ごとに3回支給されます。
- 就業手当
- 就業手当は、パートタイムなどの短時間労働を含む再就職が決まった場合に支給される手当です。失業給付の基本手当日額の30%を上限に支給されます。
- 常用就職支度手当
- 常用就職支度手当は、特定の条件を満たす再就職をした場合に支給される手当です。基本手当の90日分を上限に支給されます。
転居を伴う就職の場合は、移転費として引越し費用が支給されます。遠隔地での就職活動には、広域求職活動費として交通費や宿泊費の支給が可能です。給付金の受給には条件があるため、詳細はハローワークに確認してください。
失業保険の受給期間終了後のサポート
失業保険の受給期間終了後のサポートについて以下2点を解説します。
- ハローワークの再就職支援サービス
- 再就職手当の受け取り方
ハローワークでは失業保険の受給期間終了後も、職業相談や紹介などのサポートが継続されます。地域の就労支援機関との連携サービスもあるので、専門家のアドバイスを受けながら自分のペースで再就職活動を進めましょう。
ハローワークの再就職支援サービス
ハローワークでは再就職を目指す方々に向けて、さまざまな支援サービスを提供しています。主なサービスは以下のとおりです。
- 職業相談
- 職業紹介
- 求人情報の提供
- 職業訓練の案内と受講あっせん
- 履歴書・職務経歴書の作成支援
- 面接対策
職業相談では、経験豊富なアドバイザーが個別に相談に乗ってくれるため、自分に合った仕事を見つけやすくなります。就職支援セミナーや職場見学、職場体験を活用すると、より実践的なスキルや知識の習得が可能です。就職後のフォローアップも実施しているため、長期的なキャリア形成の支援も受けられます。
再就職手当の受け取り方
受給資格期間の3分の1以上を残して就職すれば、再就職手当を受け取れます。ハローワークで申請書を入手し、必要書類を準備したら、就職後1か月以内に提出してください。申請後は審査があり、承認されれば指定口座に振り込まれます。支給額は残りの給付日数に応じて計算され、最大で残りの給付の60%が支給されます。
6か月以上の継続雇用が条件となるため、短期の仕事では受け取れません。再就職後の賃金が失業前と比べて低下した場合は、就業促進定着手当の利用も検討しましょう。再就職手当は、早期の再就職を後押しする制度です。条件を満たせば経済的な助けになるので、ぜひ活用してください。
失業保険の受給手続き
失業保険の受給手続きに必要な必要書類と手続きの流れについて解説します。手続きを適切に行うと、スムーズに失業保険を受給できます。
必要書類
失業保険の受給手続きに必要な書類は以下のとおりです。
- 離職票
- 本人確認書類
- 写真2枚
- 銀行口座の通帳またはキャッシュカード
- マイナンバー確認書類
離職票は事業主から交付されたものを用意します。本人確認書類とは、運転免許証やマイナンバーカードなどです。3cm×2.5cmの写真を2枚準備しましょう。銀行口座は必ず本人名義のものを用意してください。状況に応じて追加の書類が必要になる場合もあります。
雇用保険被保険者証(お持ちの方のみ)や、自己都合退職の場合は退職理由を記載した書類などです。任意継続の手続きをする場合は健康保険被保険者証が求められます。書類に不備があると時間がかかるため、事前に確認し、スムーズな手続きを心がけましょう。
手続きの流れ
ハローワークに必要書類を持参し、給付手続きを開始します。求職申込みと失業認定申請を行います。個人のスケジュールに合わせて失業認定日を決定しましょう。失業認定日は4週間ごとの来所日となります。失業認定日にハローワークへ来所し、失業認定を受けてください。失業認定により失業給付の支給が決定します。
以後4週間ごとの失業認定日に来所し、求職活動状況を報告します。定期報告を通じて積極的な求職活動を証明しましょう。再就職が決まった場合は速やかにハローワークに報告してください。不正受給を防ぐためにも重要な手続きです。不明点があれば、ハローワークの職員に相談しましょう。
» 失業保険をもらうための手続きについて詳しく解説!
失業保険の受給期間に関するよくある質問
失業保険の受給期間に関するよくある質問を以下にまとめました。
- 受給期間の延長や短縮は可能?
- 受給期間が終了してしまった場合の対応策は?
- 体調不良で仕事が見つからないときはどうすればいい?
失業保険の受給を検討している方は、参考にしてください。
受給期間の延長や短縮は可能?
受給期間の延長や短縮は原則としてできません。しかし、特定の理由がある場合は例外的に延長が認められます。延長が認められる主な理由は、以下のとおりです。
- 妊娠
- 出産
- 育児
- 介護
- 疾病
- 負傷
特定の理由がある場合、最長で3年間まで受給期間を延長できます。延長を希望する場合は、現在の受給期間内にハローワークで申請してください。受給期間の短縮は基本的に認められていません。ただし、早期に再就職した場合は「早期再就職手当」を利用できます。自分の状況に合わせて適切な選択をしましょう。
受給期間が終了してしまった場合の対応策は?
受給期間が終了してしまった場合は、ハローワークに相談し、新たな支援策を探りましょう。考えられる支援策は以下のとおりです。
- 生活保護の申請
- 職業訓練制度
- 地方自治体の就労支援サービス
- 求職者支援制度
上記の支援策を利用するには、それぞれ条件があるため、詳しくはハローワークや自治体の窓口で確認してください。民間の就職支援サービスを利用するのも手段の一つです。履歴書の添削や面接対策など、より細かなサポートを受けられる場合があります。
すぐに正社員としての就職が難しい場合は、パートタイムやアルバイトで収入を確保しながら求職活動を続けるのも良い方法です。スキルアップのための資格取得や学習を行えば、再就職の可能性を高められます。知人や元同僚から仕事を紹介してもらったり、起業や自営業の可能性を検討したりするのも選択肢の一つです。
体調不良で仕事が見つからないときはどうすればいい?
体調不良で仕事が見つからない場合、まずは医療機関を受診し、体調管理を最優先してください。無理をして、さらに体調を崩さないよう注意します。ハローワークに状況を報告し、相談したり、傷病手当金の申請を検討したりしましょう。受給期間の延長申請やリハビリ、段階的な就労の考慮も可能です。
テレワークや在宅ワークの可能性を探るのも選択肢の一つです。体調に合わせた仕事内容や、勤務形態の検討もできます。短時間勤務やフレックスタイム制の仕事を探す方法もあります。スキルアップや資格取得で、就職のチャンスを増やすのもおすすめです。状況によっては、障害者雇用枠での就職も考えられます。
就労支援施設や就労移行支援事業所の利用を検討するのも良い方法です。体調不良の状況は人それぞれ異なります。焦らず、じっくりと体調回復と就職活動に取り組みましょう。
まとめ
失業保険の目的は、一定期間の生活保障です。受給期間は年齢や雇用保険加入期間によって決まります。受給中でもアルバイトは可能ですが、収入制限があるため注意してください。再就職時には給付金や手当が受けられる場合があるので、積極的に活用しましょう。
受給期間が終了しても、ハローワークの支援サービスを利用できます。特定の条件下では受給期間の延長も可能です。失業保険は、次の就職に向けた準備期間としても活用できます。受給手続きには必要書類の準備と所定の手続きが必要なので、早めに準備を始めましょう。
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