【残業の過労死ラインとは?】労働時間の上限と過労死ラインを超えるリスクを知ろう!

窓辺のオフィスで時計を見る疲れた会社員

残業が多くて倒れないか心配している人は多いです。長時間労働が続くと心身の健康を損ない、取り返しのつかない結果につながるおそれがあります。企業にとっても、従業員の労働時間を把握せず負担を放置することは、会社運営に影響する問題です。

この記事では、残業の過労死ラインの目安と法律上の上限の違い、長時間労働のリスク、従業員と会社それぞれの対処法を解説します。時間数だけで安全を判断できない理由も確認し、健康を守るために何を記録し、誰に相談すべきかを把握できます。

目次

過労死ラインとは労働者が健康でいるための労働時間の上限

過労死ラインと法律上の残業上限を分けて示す図解

過労死ラインの意味

過労死ラインとは、主に脳・心臓疾患の労災認定で、仕事と発症との関連性を評価するために使われる時間外労働の目安です。過労死ラインは、健康を保てる限界や、法律上許される残業時間を示すものではありません。

過労死ラインを下回っていても、健康への影響がないとは判断できません。 残業時間に加え、休息の取り方や仕事の負担にも注意が必要です。

過労死の基準

過労死等には、過重な業務による脳・心臓疾患での死亡や、仕事による強い心理的負担を原因とする精神障害による自殺などが含まれます。死亡に至らない脳・心臓疾患や精神障害も対象です。

脳・心臓疾患の労災認定では、長期間の過重業務だけでなく、発症に近い時期の短期間の過重業務や、異常な出来事も評価されます。過労死ラインを超えた事実だけで、死亡や病気が自動的に労災と認定されるわけではありません。

過労死ラインを超える労働の違法性

労働基準法上の違反になるかどうかは、過労死ラインとは別に判断されます。法定労働時間は原則として1日8時間・週40時間ですが、これを超えて働かせるには、原則として36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。

36協定があっても、協定で定めた時間や法律上の上限を超えて働かせることは認められません。一方、協定の範囲内であっても、会社が従業員の健康や安全に配慮する責任は残ります。

過労死ラインを超える残業時間の基準

同僚と月間カレンダーを確認する会社員

月間の残業時間の過労死ライン

脳・心臓疾患の労災認定では、発症前の残業時間を確認します。仕事と発症との関連性を評価する主な目安は、次のとおりです。

発症前の期間・時間数評価の目安
発症前1か月におおむね100時間を超える時間外労働業務と発症との関連性が強いと評価される
発症前2~6か月のいずれかの期間で、月平均おおむね80時間を超える時間外労働業務と発症との関連性が強いと評価される
月おおむね45時間を超える時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価される

2~6か月の平均とは、発症前の2か月平均、3か月平均、4か月平均、5か月平均、6か月平均をそれぞれ確認するものです。すべての期間で80時間を超える必要があるわけでも、期間内のどれか1か月が80時間を超えれば該当するわけでもありません。

ここでいう時間外労働は、原則として週40時間を超える労働時間で、休日に働いた時間も評価に関わります。例えば、出勤日数を月20日とすると、80時間は1日平均4時間の残業に相当します。

年間の残業時間の過労死ライン

年間の残業時間について、月80時間・100時間と同じ意味の「過労死ライン」が設定されているわけではありません。年間の時間数は、法律上の上限規制と区別して確認する必要があります。

一般的な時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があり、特別条項付き36協定を結ぶ場合でも、次の条件をすべて守らなければなりません。

項目一般的な上限
年間の時間外労働720時間以内。休日労働は含めない
単月の時間外労働と休日労働の合計100時間未満
連続する2~6か月の時間外労働と休日労働の合計の平均いずれも月80時間以内
月45時間を超える時間外労働年6か月まで

年720時間以内であっても、単月や複数月平均の条件を超えれば問題になります。なお、一部の業務や制度には特例があるため、適用される上限の最新情報は厚生労働省の公式サイトで確認が必要です。

時間数に達していなくても注意が必要な働き方

2021年9月の認定基準改正では、労働時間と、時間以外の負担を総合して評価することが明確になりました。目安に近い時間外労働に加え、次のような負担がある場合は、基準の時間数に達していなくても労災と認定される可能性があります。

  • 休日のない連続勤務や長い拘束時間
  • 終業から次の始業までの休息時間の短さ
  • 不規則な勤務、交替制勤務、深夜勤務
  • 出張などに伴う移動の負担
  • 心理的・身体的な負担が大きい業務
  • 暑さ、寒さ、騒音などの作業環境

また、精神障害には脳・心臓疾患とは別の認定基準があります。対象となる精神障害の発病、発病前おおむね6か月の業務による強い心理的負担、業務以外の負担や本人側の要因との関係などから判断されるため、月80時間・100時間だけでは判断できません。

残業時間の過労死ラインを超えるリスク

静かなオフィスの机と椅子、棚に置かれた安全ヘルメット

労働者の健康や生命に重大な影響を及ぼす

長時間労働が続くと疲労が蓄積し、脳・心臓疾患や精神的な不調につながるおそれがあります。働く時間が長いほど、睡眠や休息のための時間も確保しにくくなるためです。

例えば、脳梗塞や心筋梗塞などの疾患に加え、睡眠不足による集中力や判断力の低下にも注意が必要です。運転や機械操作などの業務では、事故につながる危険もあります。

労働基準法違反を疑われる

長時間労働が常態化している職場では、労働基準監督署による調査や指導の対象になる可能性があります。調査では、36協定の有無や内容、実際の労働時間などが確認されます。

違反が認められた場合は、是正勧告や指導を受けることがあります。勤怠記録と実際の勤務状況が食い違っていれば、会社は実態を確認し、改善する必要があります。

違反が発覚した場合、労働基準監督署からの調査を受け、罰則が課されることも考えられます。労働基準法違反が社会に知られると、企業の評判に悪影響を及ぼします。企業は労働時間の管理に十分な注意を払うことが重要です。適切な労働時間管理と法令遵守を怠ると、深刻な結果を招くことになります。
» 残業時間は月にどのくらい?上限を超えたときの対策を徹底解説

罰金が科せられる

時間外労働の上限規制に違反した場合は、30万円以下の罰金などの刑事罰が科されるおそれがあります。ただし、違反が確認されたり、是正勧告を受けたりしただけで、必ず罰金になるわけではありません。

刑事処分の有無は個別の事情によって異なります。会社は指導内容に応じて違反を是正し、再発を防ぐ運用に改める必要があります。

損害賠償を請求される

自然光の差す会議テーブルに置かれた閉じたファイル

会社が従業員の健康や安全に配慮する義務を怠り、過重労働による健康被害が生じた場合は、損害賠償責任を問われる可能性があります。

請求の対象には、治療費や慰謝料、働けなくなったことによる収入の損失などが含まれます。ただし、会社の責任や賠償の範囲は、業務と健康被害との関係などを踏まえて判断されます。

離職率が上がる

過重労働を放置すると、体調不良や仕事と生活の両立の難しさから、従業員が離職するおそれがあります。長時間働く状況を改善してもらえなければ、会社への不信感にもつながります。

退職者の業務が残った従業員に集中すると、さらに負担が増す悪循環も考えられます。人材の流出を防ぐには、残業が多い人の業務を減らす対応が欠かせません。

企業イメージが低下する

長時間労働や健康被害への対応が問題になると、企業の信頼が損なわれる可能性があります。取引先や顧客との関係だけでなく、求職者の応募にも影響しかねません。

企業への信頼を保つには、発信内容を工夫するだけでなく、実際の働き方を改善する必要があります。相談を受けた際に放置せず、勤務状況を確認して対応する姿勢が求められます。

【従業員側】残業時間の過労死ラインを超えそうなときの対処法

社員が同僚と業務の進め方を相談している

業務を効率化する

業務の優先順位を明確にすると、限られた時間で何を進めるべきか判断しやすくなります。まずは担当している仕事と期限、必要な時間を書き出し、急ぐ仕事と調整できる仕事を分けます。

ただし、業務量が多すぎる場合は、個人の工夫だけでは解決できません。休憩を削ったり、記録に残さず働いたりせず、期限や担当の変更を上司に相談する必要があります。

コミュニケーションをとる

残業が増えている場合は、上司や同僚に、仕事量と必要な時間を具体的に伝えることが有効です。「忙しい」と伝えるだけでなく、どの仕事に時間がかかり、何が期限に間に合わないのかを共有すると、対応を検討しやすくなります。

相談時には、次の内容を用意すると話を進めやすくなります。

  • 担当業務と期限、作業に必要な時間
  • 実際の残業時間や休日出勤の状況
  • 期限の延長や分担の変更など、必要な支援

勤務や体調の変化も早めに伝え、業務の優先順位を一緒に決めることが大切です。

労働時間を記録する

相談に備えて、始業・終業時刻や休憩時間、休日に働いた時間を正確に記録しておくと役立ちます。残業代の対象として申告した時間だけでなく、実際に働いた時間を把握するためです。

会社の勤怠記録が実態と異なる場合は、業務上のメールやパソコンの使用履歴などと照らして確認します。記録は、社内での業務調整や専門家への相談時に、勤務状況を説明する手がかりになります。

医師に相談する

診療室で医師に体調を相談する会社員

不眠や強い疲労、気分の落ち込み、体の痛みなどがある場合は、残業時間が基準に達するのを待たずに医師へ相談することが大切です。受診時には、症状が始まった時期、勤務時間、睡眠の状況を伝えると、医師が状態を把握しやすくなります。

会社に産業医がいる場合は、仕事の負担や働き方について相談する方法もあります。一般の労働者では、月80時間を超える時間外・休日労働があり、疲労の蓄積が認められる場合、本人の申出により会社が医師の面接指導を実施する制度があります。

面接指導の対象に当てはまらなくても、不調を我慢する必要はありません。診断や助言を踏まえ、業務の軽減や休養について会社と相談することが必要です。

専門家に相談する

社内で相談しても改善しない場合や、違法な残業が疑われる場合は、労働問題に詳しい弁護士、労働基準監督署、労働組合などへの相談が選択肢になります。勤務状況の記録を用意しておくと、問題点を具体的に伝えられます。

弁護士には、会社への対応や労災申請、損害賠償に関する相談が可能です。労働基準監督署には、労働時間や未払い残業代など、労働基準法違反が疑われる問題を相談できます。

» サービス残業が当たり前になっている企業の特徴を解説!

【会社側】残業時間の過労死ラインを超えそうなときの対処法

管理職と社員が業務の分担を相談する様子

労働時間を把握する

会社は、従業員の実際の労働時間を把握し、過重労働が見込まれる段階で業務を調整する必要があります。タイムカードやICカード、パソコンの使用履歴などの客観的な記録を活用し、申告時間との食い違いも確認します。

単月の残業だけでなく、休日労働や連続する複数月の平均、連続勤務の日数にも目を向けることが必要です。勤怠管理システムの警告機能は気づきを得る手段になりますが、通知を受けた後に仕事を減らす対応が欠かせません。

» 平均的な残業時間はどのくらい?職種や年齢、性別による違いを解説

業務量と人員配置を見直す

残業を減らすには、不要な作業の削減と、特定の従業員に集中している仕事の見直しが必要です。残業の申請を厳しくするだけでは、業務量が変わらず、記録されない残業につながるおそれがあります。

例えば、重複する報告や会議を減らす、担当を分ける、期限を調整するといった対応が考えられます。休暇を取りやすくする際も、不在者の仕事が周囲に偏らないよう、代わりに対応できる体制を用意します。

休息時間と健康管理の体制を確保する

疲労を回復できる働き方にするため、勤務間インターバル制度の導入を検討する方法があります。勤務間インターバルとは、終業から次の始業までに確保する休息時間のことです。

制度の導入は事業主の努力義務であり、すべての労働者について一律に11時間の休息が法律で義務付けられているわけではありません。例えば11時間の休息を確保する制度なら、残業で終業が遅くなった際に翌日の始業を遅らせるなど、実際に休める運用が必要です。

健康管理では、医師による面接指導の申出窓口を周知し、対象者が利用できる体制を設けます。医師の意見を踏まえた労働時間の短縮や業務変更に加え、ハラスメントを含めて相談できる窓口の設置も有効です。

就業規則や雇用契約書を見直す

就業規則の書類と確認用チェックリストを机に広げた俯瞰写真

就業規則や雇用契約書では、労働時間や残業、休日の扱いが現行の法令と実際の運用に合っているか確認します。36協定の内容と、現場で行われている勤務が一致しているかも確認が必要です。

特別条項を設けている場合は、発動する事情や手続き、健康を確保する措置まで含めて見直します。書類の修正にとどめず、管理職と従業員に内容を周知し、現場で守れる業務量にすることが求められます。

企業側の労働専門弁護士に相談する

労働問題に詳しい弁護士には、残業の上限規制や会社の責任を踏まえた対応を相談できます。36協定、就業規則、雇用契約書に加え、実際の勤怠記録を用意すると、運用上の問題も確認しやすくなります。

すでに長時間労働や健康被害が発生している場合は、従業員への対応と再発防止策を併せて検討する必要があります。法的な対応は弁護士、健康面の判断は産業医などと連携して進めます。

まとめ

窓辺の共有テーブルと、休息を取る会社員

過労死ラインは、脳・心臓疾患の労災認定で使われる時間外労働の目安です。発症前1か月のおおむね100時間超、または発症前2~6か月のいずれかの期間平均で月おおむね80時間超が代表的な基準であり、健康を保てる上限を示すものではありません。

従業員は勤務時間を記録し、業務量の調整を上司に相談することが必要です。不調がある場合は、時間数にかかわらず医師へ相談し、社内で改善が難しい問題は専門家や相談機関につなげます。

会社には、実際の労働時間を把握し、業務の分担や期限、休息の取り方を見直す対応が求められます。法的な上限を守るだけでなく、一人ひとりの負担に応じて働き方を改善することが、健康被害の予防につながります。

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