【働き方改革】みなし残業とは?基本情報を知って労働環境を改善しよう

  • みなし残業ってやばい?
  • みなし残業のメリット・デメリットが知りたい
  • みなし残業を超えた分は請求できるの?

多くの労働者と雇用者がみなし残業制度について疑問を持っています。しかし、みなし残業を正しく運用できていない企業が多いのが現実です。

この記事では、みなし残業制度について解説します。記事を読むと、現在の自分の労働環境を正確に理解し、改善するための対処法がわかります。みなし残業制度は悪い制度ではありません。労働者・雇用者が納得する形で運用できれば、労働環境の改善ができます。

目次

みなし残業(固定残業)制度とは一定の残業代が給与に含まれている制度

みなし残業制度(固定残業制度)とは、労働者の残業代を事前に一定額で固定して支払う制度です。みなし残業制度の特徴は、残業の有無にかかわらず毎月決められた残業代が支払われる点にあります。

混同しやすい「みなし労働時間制」という制度も押さえておきましょう。明確に区別して理解するべき「みなし残業制度」と「みなし労働時間制度」について解説します。

固定残業代制とみなし労働時間制の違い

「固定残業代制」と「みなし労働時間制」の主な違いは、計算方法と適用状況です。

以下に具体的な違いを解説します。

固定残業代制
労働者の給与にあらかじめ残業代が含まれており、定められた時間以上の労働に対して追加で残業代を支払う必要が生じます。
みなし労働時間制
労働時間が一定とみなされ、実際の労働時間にかかわらず固定された給与が支払われる制度です。みなし労働時間制は、定められた時間を超えて働いても追加の残業代の支払い義務がありません。

みなし労働時間制は、成果を重視する職場で採用されやすく「専門業務型裁量労働制」に記載された19の職種が対象です。詳細は以下の厚生労働省のホームページから確認できます。
» 厚生労働省(外部サイト)

みなし残業制度の導入時のポイント

みなし残業代制は、従業員が実際に働いた時間に関係なく、事前に定められた時間分の残業代を支払います。定められた時間に達しなくても残業代が減らないため、従業員は業務の効率化を目指しやすいです。

みなし残業代制は、正しい計算のもと設定することで企業、従業員ともにメリットのある制度です。慎重に運用すれば、より良い会社経営につながります。

みなし残業代の設定方法

みなし残業代の設定方法は、給与に直接影響を与えます。トラブルを避けるためにも、みなし残業は公正で透明性のある計算が必要です。

基本給に上乗せする形で、事前に定めた残業見込時間数に基づき、固定の残業代を支払う方式を採用します。計算式は「基本給 ÷ 月間所定労働時間 × 1.25(時間外手当率) × みなし労働時間数」です。実際の労働時間とみなし残業時間に大きな差異が出ないよう細心の注意を払いましょう。

求人広告への表記

求人広告に労働条件を明確に記載することは、応募者が労働条件を正確に理解し、後のトラブルを避けるためにも重要です。固定残業時間と残業代の金額は具体的に示しましょう。

仕事が早く終わっても残業代は定額で支給される説明は、応募者にとってメリットのある情報です。一方、固定残業時間より早く終わらない時間設定は、信頼関係を壊すので注意が必要です。

雇用契約書・就業規則への表記

雇用契約書と就業規則は、労働者と雇用者の間でのトラブルを避けるために、みなし残業代に関する条項を明確に記載しましょう。双方の合意は、信頼関係の確保に重要です。

従業員の正しい理解と労働基準監督署の承認を得るために、雇用契約書と就業規則には以下を表記する必要があります。

雇用契約書
給与体系が記載され、みなし残業代が含まれる場合は計算方法や対象となる時間数を詳細に説明します。
就業規則
みなし残業の条件、計算方法、及び対象となる時間数を明記しましょう。

雇用契約書及び就業規則の記載は、法的な紛争を避けるためにも、明瞭かつ詳細であるべきです。従業員がみなし残業制に納得した上で合意し、長期的に不満がでない内容にすることが重要です。

みなし残業制度のメリットとデメリット

みなし残業制度は、企業と従業員それぞれにメリットとデメリットがあります。しっかり両面を押さえた上で適切な労働環境の構築をしましょう。

  • 企業にとってのメリット
  • 従業員にとってのメリット
  • 企業にとってのデメリット
  • 従業員にとってのデメリット

企業にとってのメリット

毎月の人件費が明確になるため財務計画を立てやすく、労務管理がスムーズに行えるのが固定残業制度のメリットです。労務管理の手間が減少すると、管理部門の負担が軽減されるので労働生産性の向上が期待できます。

人件費の計算に割くコストが削減できると、その他の業務に注力できるため効率よく事務作業が進行します。法令遵守の観点からも効果的なため、残業時間の管理の効率化は企業運営のさまざまな面でプラスです。

従業員にとってのメリット

みなし残業の従業員のメリットは以下のとおりです。

  • 毎月一定の残業代が保証される
  • 収入が予測しやすく家計管理が容易になる
  • 実際には働いていない時間にも残業代が支払われる
  • 仕事を早く終わらせればプライベートの時間が増える

みなし残業制度は、収入の安定・労働時間の適切な管理・ワークライフバランスの向上などのメリットを従業員に提供できます。

企業にとってのデメリット

企業にとってのデメリットは以下のとおりです。

  • 適切にみなし残業の時間を設定しないと、長時間労働が常態化する
  • 長時間労働が常態化すると、生産性・労働者の士気の低下につながる
  • みなし残業制度が労働基準法違反とみなされると、行政指導される

従業員や業界の信用を損なうみなし残業の設定をすると、企業運営に大きなダメージになります。デメリットを避けるためには、適切な管理を徹底した上でみなし残業の運用をしましょう。

従業員にとってのデメリット

みなし残業のデメリットは以下のとおりです。

  • 労働時間が固定された残業代を超えても追加の残業代が支払われない事例が多い
  • 長時間労働を助長しやすく、ワークライフバランスの崩壊や健康問題のリスクが高まる
  • 長時間労働が常態化すると効率的な仕事がおろそかになり、生産性の低下を招く

従業員のデメリットは、従業員のキャリアや生活の質の悪化を招くことになります。離職率や仕事へのモチベーションにも大きく影響するため、みなし残業は適切に運用しましょう。

みなし残業制度が違法になるケース

みなし残業制度の運用には労働基準法に基づいた適切な管理が必要不可欠です。労働基準法に違反すると、労働基準監督署から行政指導を受ける可能性があります。

みなし残業制度が違法になるケースとして以下を解説します。

  • 基本給が最低賃金を下回っている
  • 時間超過分の残業に対して差額を支払っていない
  • 月45時間を超える残業時間を「みなし残業」としている
  • 給与明細に残業時間数・みなし残業代が記載されていない

基本給が最低賃金を下回っている

基本給が最低賃金を下回っているのは、労働基準法違反です。基本給が最低賃金を下回ると、従業員の生活基盤が崩れる恐れがあり、社会的保護の観点からも大きな問題です。労働基準監督署から指導の対象になれば会社の評判が落ち、優秀な人材の確保が滞る悪影響もでます。

労働基準監督署は、違法な賃金支払いが認められた場合は、 使用者に対して是正勧告が行われます。労働賃金の適切な管理は企業の義務のため、労働者と使用者との合意があっても、最低賃金以下で働かせることは違法です。

時間超過分の残業に対して差額を支払っていない

みなし残業制度は、法定労働時間を超えた場合の対応も問題となります。通常は残業代とは別に、超過時間に対して適切な残業代を支払う必要がありますが、適切に行われていないケースが多いのが現状です。

本来受け取るべき金額よりも少ない給与で働いている場合は、労働基準法を根拠に残業代の未払いに対して保証を求められます。法律のトラブルは会社としての信頼の失墜や人員不足に拍車をかけるため、適正に管理しましょう。
» 残業代の計算方法と種類別の計算法、計算例を解説!

月45時間を超える残業時間を「みなし残業」としている

月45時間を超える残業をみなし残業とするためには、労働基準法を根拠とした臨時的かつ特別な事情が必要です。適切な手続きを踏まずにみなし残業を設定すると、従業員の権利侵害につながる恐れがあります。

具体的に違法となる可能性があるケースは以下のとおりです。

  • 労働者の同意がない
  • 場合残業時間が45時間を超えても、みなし残業代しか支払われない
  • みなし残業時間が著しく長く、労働者の健康を害する恐れがある

みなし残業制度を適用する際には、超過分の時間に対して正確な残業代を支払う体制を整えましょう。
» 残業時間の上限規制の対象と例外、36協定について解説!

給与明細に残業時間数・みなし残業代が記載されていない

給与明細の上でみなし残業代の時間・金額の記載がないと、労働基準法の要件を満たしていないと判断される可能性があります。従業員が働いた時間や、固定残業代が正確に把握できないことは問題です。給与明細の透明性の確保は、労働者と雇用者の信頼関係を築く上で重要です。

労働基準法では、給与の内訳(基本給、残業代など)を明確に記載することが求められています。残業代や基本給に限らず、適正な賃金の管理が徹底されていない会社は行政指導のリスクが常につきまとっています。

未払いの残業代の請求方法

未払いの残業代を請求する際には、適切な手順を踏むことがポイントです。勤務先を相手に未払いの残業代の支払いを要求する際の具体的な方法と手順を解説します。

  • 勤務先と話し合う
  • 内容証明郵便で勤務先に請求書を送る
  • 労働基準監督署に相談する
  • 労働審判を起こす

勤務先と話し合う

未払いの残業代を請求する際、可能であれば勤務先との話し合いが効果的です。

勤務先と話し合う際のポイントを以下に解説します。

  1. 具体的な残業時間と請求金額を把握する
  2. 証拠となる資料を集める(タイムカード、勤怠管理システムの画面、メールなど)
  3. 法令や労働契約書の内容を確認しておく
  4. 高圧的な態度は避け、 冷静かつ丁寧に話す
  5. 感情的にならず、 論理的に話す
  6. 具体的な残業時間数と請求金額を伝える
  7. 支払方法と期限を伝える
  8. 必要に応じて、書面で要求を伝える

上記を押さえ、双方が納得いく解決策を模索することが目標です。ボイスレコーダーを使用する場合は、必ず許可を得なければなりません。無断で録音すると新たなトラブルに発展する可能性があるため注意しましょう。

内容証明郵便で勤務先に請求書を送る

内容証明郵便を利用して勤務先に請求書を送る方法は、未払いの残業代を効果的に請求する手段として有効です。郵便局が発送日時と内容を公式に証明し、法的な証拠となります

内容証明郵便で請求書を送付する際のポイントを以下に紹介します。

  • 会社名、部署名、担当者名
  • 請求者名
  • 請求年月日
  • 請求金額
  • 請求内容(具体的な残業時間数、単価など)
  • 支払期日
  • 支払方法

上記の請求書の内容を簡潔にまとめ、内容証明郵便で送付する旨を明記しましょう。証拠として以下の内容を押さえましょう。

  • タイムカード
  • 勤怠管理システムの画面キャプチャ
  • メール等

内容証明郵便は、公式記録として法的効力を発揮する手段です。送付状と証拠資料はコピーを取っておきましょう。法的措置をとる際にも有効なので、初期の段階で内容証明郵便を使用するのは効果的です。

労働基準監督署に相談する

労働基準監督署は、労働基準法にもとづいて、労働者の労働問題に対して専門的な助言を無料で提供します。相談する際は、勤務状況や給与明細、労働契約書などの証拠を持参すると話がスムーズに進むため早めに準備しておきましょう。

労働基準監督署は、違法な労働環境が発覚した場合に行政指導を行う権限を持っています。労働環境の悪化している会社では、多くの従業員の不満が蓄積している傾向があります。労働者の匿名性は厳正に保護されるため、報復を恐れることなく安心して相談しましょう。

労働審判を起こす

労働審判は、未払いの残業代など労働関連の紛争を迅速に解決する手段として有効です。手続きは地方裁判所内の労働審判部で行われ、申立てから3つの審判期日を経て3か月以内に終結することが目標です。

労働審判は専門的な知識が必要な場面が多く、弁護士への相談が推奨されます。しかし、必ずしも弁護士による代理が必要なわけではありません。労働問題は解決まで長期間かかる傾向にあるため、労働審判を起こす方が結果的に労力が小さく済むことは多いです。

まとめ

みなし残業制度は、企業が従業員に固定の残業代を定額で支払う制度です。みなし残業制度は正しく運用し、あらかじめ理解しておくことで企業、従業員ともにメリットがあります。

しかし、従業員が実際の労働時間に見合わない報酬を受けている事例も多く、泣き寝入りしているケースが目立ちます。現状を変えたい場合は、以下の順序で対策を練りましょう。

  1. 労働基準監督署に相談(無料で助言を得られる)
  2. 勤務先との話し合い(書面でのやり取りも効果的)
  3. 法的措置の検討

労働者には明確な権利があります。労働者の権利侵害をしている企業は残念ながら少なくないため、正しい知識と行動力で自らを守るしかありません。知識は強力な武器です。不当に扱われている被害者が、改善に向かうことを願っています。

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