退職金はいつもらえる?2つの受取方法と支払われないときの対処法を解説

  • 退職金の受け取り時期に不安がある
  • 退職金の金額が適正かわからない
  • 退職金の税金や活用方法について悩んでいる

退職金は将来の生活設計に大きく影響します。しかし、退職金がいつもらえるのか、疑問や不安を抱いている人は多いです。この記事では、退職金の受け取り方やタイミング、退職金の相場、発生する税金などを詳しく解説します。

記事を読めば、自分に合った退職金の受け取り方や活用方法がわかります。退職金は、退職後3ヶ月以内に一括で支払われるのが一般的です。ただし、企業規模や支払い方法によって異なる場合があります。退職金の金額や支払い時期について不安がある場合は、早めに会社の担当部署に確認しましょう。

目次

退職金はいつもらえるのか

退職金の支払時期は、企業の規模や状況によって異なります。大企業では比較的早く、中小企業では遅れる場合があります。退職金の支払時期は、就業規則や退職金規定に記載されているため、確認しましょう。一般的な退職金の支払時期や企業の規模による違い、支払いが遅れるケースについて解説します。

一般的な退職金の支払時期

一般的な退職金の支払時期は、退職日から1~2か月後です。労働者の生活の安定を考慮して、比較的早期に支払われます。企業によって、退職月の翌月末や退職後3か月以内、退職金規定に定められた期日などさまざまです。

退職金の支払時期が不明な場合は、就業規則の退職金規定をチェックしたり、上司に確認したりしましょう。退職前に退職金の支払時期を把握しておけば、退職後もスムーズに生活設計ができます。

企業の規模による退職金の支払時期の違い

大企業の場合は企業予算として退職金を確保しているため、退職後1~3か月以内に支払われるケースが多いです。中小企業は、資金繰りの関係で退職金の支払いが遅れたり、分割払いになったりする場合があります。退職金の支払時期は、企業の業績や業種によっても異なります。

業績不振の企業では、退職金の支払いが遅れたり、退職金制度がなかったりする場合も多いです。農業や建設業などの季節労働者が多い業種では、退職金の支払時期が不定期です。公的機関の安定性と制度の整備が整っている公務員は、退職後すぐに退職金が支払われます。

退職金の支払いが遅れるケース

退職金の支払いが遅れる場合には、企業は従業員に対して説明する責任があります。退職金の支払いが遅れるケースは、以下のとおりです。

  • 企業の資金繰りが厳しい
  • 退職金制度の変更や廃止の過渡期にある
  • 退職金の計算に時間がかかる
  • 労使間の交渉が難航している

資金繰りが厳しい企業では、退職金の資金を用意するために時間がかかります。懲戒解雇により解約処分に至った場合、労使間の交渉が難航しやすいです。長期勤務者や複雑な退職金規定により、退職金の計算に時間がかかる場合もあります。退職手続きや書類提出の遅れなども、退職金の支払いが遅延する原因です。

退職金の受け取り方とタイミングの種類

退職金の受け取り方とタイミングには、一括受け取りと年金受取の2種類があります。自分の状況に合わせて最適な方法を選ぶために、慎重な検討が必要です。
» 一時金?年金?退職金の適切なもらい方や税金対策を解説

一括受け取り

一括受け取りは、退職金を一括で受け取る方法で、一度にまとまった資金を得られます。新たな投資や運用、生活費や住宅ローンの返済にあてられるため、退職金を効果的に活用したい方におすすめです。一括受け取りを選択すると、現在の価値で退職金を受け取れるため、インフレリスクも避けられます。

退職金の一括受け取りは、生前贈与の資金としても活用できます。一括で受け取った退職金を計画的に運用すれば、将来の相続に向けた準備が可能です。

年金受取

年金受取とは、退職金を分割で受け取る方法です。金融機関が退職金を運用し、運用益が上乗せされるため、受取総額が増えます。退職金を年金として受け取れば、使い込むリスクを回避できるため、老後の生活資金として長期的に活用が可能です。

退職金を年金として受け取る場合には、10年と15年、20年から受取期間を選択できます。受取頻度も月に1回や年に1回などから自由に選択が可能です。受給者が亡くなった場合は、遺族に残りの年金が支払われます。年金受取は、一括受け取りとの併用が可能です。

退職金が支払われないときの対処法

退職金が支払われないときの対処法は、以下のとおりです。

  • 会社の担当部署に確認する
  • 会社に退職金を請求する
  • 労働基準監督書へ相談する
  • 弁護士に相談する

会社の担当部署に確認する

退職金が支払われない場合は、会社の担当部署に確認しましょう。担当部署に確認すると、退職金が支払われない原因を特定できます。担当者と話し合いをする際は、退職金の支払が遅れている理由を尋ね、支払予定日を確認してください。後々のトラブルを避けるためには、書面での回答を依頼しましょう。

会社に退職金を請求する

退職金が支払われない場合は、会社に退職金を請求する手段も有効です。会社に退職金を請求する際は、請求書を提出してください。請求書には、以下の項目を記載します。

  • 退職日
  • 勤務年数
  • 退職金の金額
  • 退職金の支払期限

請求書を郵送する際は、内容証明郵便で記録を残しましょう。請求書の提出後に会社からの返答がない場合は、再度請求書を送付してください。対応してもらえない場合は、直接交渉や法的手段を検討する必要があります。労働組合がある場合は協力を求めましょう。会社の経営状況によっては、分割払いの提案もおすすめです。

労働基準監督署へ相談する

退職金が支払われない際の対処法には、労働基準監督署の相談もあります。労働基準監督署は、会社に対して調査や指導、勧告などを実行する権限を持っています。就業規則に退職金の定めがあるにもかかわらず支払われない場合には、退職金の請求が可能です。

労働基準監督署に退職金の相談をする際は、電話やオンライン、窓口などで予約を取りましょう。相談時は、雇用契約書や給与明細などの書類を準備し、状況を説明してください。専門知識を持った職員が対応してくれるため、適切なアドバイスを得られます。場合によっては、労働基準監督署から会社への指導を依頼できます。

弁護士に相談する

退職金が支払われないときは、弁護士に相談する方法も有効です。弁護士に相談するメリットは、以下のとおりです。

  • 和解交渉を任せられる
  • 裁判を視野に入れた解決策を把握できる
  • 退職金を受け取れる可能性が高まる
  • 訴訟代理人として活動してもらえる

弁護士に相談すると、法的な観点と証拠にもとづき適切に主張できるため、退職金を受け取れる可能性が高まります。企業の財務状況や支払能力などの調査も可能です。

退職金の相場

退職金の相場は、勤続年数や企業規模、職種、業種によって大きく異なります。退職理由や企業の業績も影響するため、退職金規定や労働協約を確認しましょう。退職金の相場について、企業規模や職種、業種の違いに分けて解説します。
» 退職金の相場は?退職金の基礎知識から税金対策まで徹底解説!

一般的な退職金の相場

一般的な退職金の相場は、勤続年数20年で年収の2~3倍程度です。年収500万円で20年間勤務した場合には、1,000~1,500万円が退職金として支払われます。企業の経営状況によっては、退職金の支給額が変動する場合もあります。退職金の支給額は、会社の担当部署に確認しましょう。

大企業と中小企業の退職金の違い

大企業と中小企業では、退職金の相場に違いがあります。中小企業よりも大企業のほうが退職金の相場が高いです。以下で、勤続年数20年でもらえる退職金を比較しました。

企業退職金の相場
大企業1,500~2,000万円程度
中小企業700~1,000万円程度
大企業と中小企業の退職金の相場

大企業と中小企業で退職金に差があるのは、退職金制度の有無が要因です。大企業では退職金制度を設けている場合が大半なのに対して、中小企業では退職金制度を設けていないケースが多くあります。資金の多い大企業では退職金制度を導入できますが、資金の少ない中小企業では退職金制度を導入するのは困難です。

中小企業では、経営状況によって退職金の支払が不安定になる可能性もあります。大企業では年功序列型の退職金制度が多く、中小企業では成果主義型の退職金制度を採用するケースが多いです。

職種による退職金の相場の違い

退職金の相場は、職種によっても異なります。管理職に就くと年収が上がるため、退職金も増えるのが一般的です。管理職の年収が800万円での場合には、1,600~2,400万円の退職金がもらえます。企業に属さず活動している個人事業主の場合は、退職金自体がありません。

業種による退職金の相場の違い

退職金の相場は、業種によっても変わります。高卒で定年退職まで勤続した場合の退職金の支給額を業種別にまとめると、以下のとおりです。

業種退職金の相場
建設業1,133万4,000円
製造業999万6,000円
金融業、保険業1,073万6,000円
技術業1,026万1,000円
業種による退職金の相場

建設業や金融業と比較すると、製造業における退職金は少ないです。大卒や高卒などの学歴の違いによっても、退職金の支給額は異なります。大卒で退職金が多く支給されるのは金融業です。医療業や福祉業の退職金支給額は、300万円前後です。
» 東京都産業労働局(外部サイト)

退職金にかかる税金

退職金にかかる税金の具体的な計算方法と、節税対策について解説します。

退職金にかかる税金と計算方法

退職金には、所得税と復興特別所得税、住民税がかかります。所得税および復興特別所得税を計算するには、課税退職所得金額の算出が必要です。課税退職所得金額は「(退職金-退職所得控除額)×1/2=課税退職所得金額」で計算します。

退職所得控除額の計算式は、以下のとおりです。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数(最低80万円)
20年以上800万円+70万円×(勤続年数-20年)
退職金にかかる税金と計算方法

勤続年数15年で1,000万円の退職金を支給された場合、退職所得控除額は600万円です。所得税額は、課税退職所得金額に所得税率をかけ、控除額を引いて算出します。

所得税率および控除額は、下表のとおりです。

課税退職所得金額税率控除額
1,000円~194万9,000円5%0円
195万~329万9,000円10%9万7,500円
330万~694万9,000円20%42万7,500円
695万~899万9,000円23%63万6,000円
900万~1,799万9,000円33%153万6,000円
1,800万~3,999万9,000円40%279万6,000円
所得税率および控除額

課税退職所得金額が200万円の場合、所得税率は10%で、控除額は9万7,500円です。退職金の所得税額は、200万円×10%ー9万7,500円で、10万2,500円と計算できます。復興特別所得税額は、退職金の所得税率額に2.1%の税率をかけて算出します。

退職金の所得税額が10万2,500円の場合は2,152円です。退職金にかかる所得税の総額は、10万2,500円+2,152円で10万4,652円と算出されます。住民税は一律10%で、計算式は「課税退職所得金額×住民税率(10%)」です。所得税と復興特別所得税、住民税の合計が退職金にかかります。
» 国税庁(外部サイト)

退職金の節税対策

退職金にかかる税金を軽減したい場合には、一括受け取りがおすすめです。退職所得控除を利用できるため、退職金にかかる税金を減らせます。退職金を企業年金として受け取る方法も有効です。企業年金として受け取る場合は、会社に退職所得の受給に関する申告書を提出しましょう。
» 国税庁(外部サイト)

退職金を賢く活用する方法

将来の経済的な安定のためには、退職金を賢く活用することが大切です。自分の状況に合わせて最適な方法を選びましょう。以下の2つの活用法について解説します。

  • 資産運用で退職金を増やす
  • 住宅ローンを繰上げ返済する

資産運用で退職金を増やす

資産運用とは、自分が保有する資産を投資して利益を得る手段です。退職金を金融機関に預けていると、インフレの影響を受けた際にお金の価値が下がります。資産運用で退職金を増やせば、老後の生活を豊かに送れます

おすすめの資産運用の方法は、以下のとおりです。

  • 投資信託
  • 株式投資
  • 個人向け国債

投資経験のない方は新NISAを活用し、投資信託を選びましょう。投資信託は運用をプロに任せられ、新NISAは年間で最大360万円の投資資金の利益を非課税にできます。退職金を投資する際は、分散投資や長期投資、積立投資の視点が重要です。どのくらいの資産を投資にまわすのかを考え、必要に応じてプロに相談してください。

住宅ローンを繰上げ返済をする

退職金で住宅ローンを全額繰上げ返済すると、利息分の返済額が減ります。数十年後の金利の動向を考える必要がなくなる点もメリットです。繰上げ返済する際は、金融機関の窓口で手続きが必要です。金融機関の窓口に返済書類を提出し、返済用口座に資金を入金してください。

完済日当日までの未払利息や手数料がかかる場合があるため、必要な金額を事前に確認しましょう。全額繰上げ返済か一部繰上げ返済かを金融機関と相談するのが得策です。老後資金に余裕があれば、退職金を全額住宅ローンの返済にあてられます。老後資金が不十分な場合は、一部繰上げ返済を検討しましょう。

まとめ

退職金は、退職日から1~2か月以内に支払われるのが一般的です。企業の規模や経営状況によっては、退職金の支払時期が遅れる場合があります。中小企業では、退職金自体がない場合も多いです。退職金の受け取り方法には、一括受け取りと年金受け取りがあります。節税したい場合は一括受け取りが最適です。

退職金が支払われない場合は、会社への確認や労働基準監督署への相談が必要です。退職金の相場は企業規模や職種、業種によって異なるため、自分の状況を把握しましょう。受け取った退職金は資産運用や住宅ローンの繰上げ返済などにあてると、将来の生活設計に役立ちます。

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